長尾寺門前で出会った結願者の皆様のお話|1200キロの旅路が教えてくれたこと!

87番長尾寺の門前。ここは、長かった四国八十八ヶ所霊場の旅において、非常に特別な空気感が漂う場所です。

背負ったリュックは泥や汗で色あせ、金剛杖の先は細くなり、菅笠は雨風にさらされて年季が入っている。そんなお遍路さんたちが、いよいよ最後の88番大窪寺へ向けて「最後の覚悟」を決める場所でもあります。

これまで門前で数え切れないほどのお遍路さんをお見送りし、その結願(けちがん)の瞬間に立ち会ってきた宿主の目から見た、忘れられない「結願者たちの感動の実話」を少しだけご紹介させてください。

感動のエピソード
目次

涙が止まらなかった、ある定年退職後の男性のお話

ある春の夕暮れ、長尾寺の門前で一人、ぽつんと佇んでいる60代半ばの男性がいました。 声をかけると、その方はハッと我に返り、照れくさそうに目元を拭いました。

「40年間勤め上げた会社を退職して、自分を見つめ直すために歩き始めました。最初は『本当に歩ききれるのか』不安で、足のマメの痛みに耐えながら、毎日必死で……。 でも、歩いているうちに、いろんな人がお接待(お茶やお菓子を差し入れてくれる温かい文化)をしてくれたり、道案内をしてくれたりした。 気がついたら、自分一人で歩いてきたんじゃなくて、四国の人たちに生かされてここまで来られたんだと、長尾寺の山門を見上げた瞬間に涙が溢れて止まらなくなってしまってね」

男性は翌朝、一歩一歩を噛みしめるように力強く、大窪寺へ向かって登っていかれました。結願して当宿に戻ってこられたときの、あの晴れやかで、どこか仏様のように優しい笑顔は、今でも私の宝物です。

「お母さんと一緒に歩いた」お嬢さんの2人分のお遍路

もう一人、忘れられないのは20代後半の若い女性お遍路さんです。 彼女の背負うリュックには、亡くなったお母様のご遺影と、もう一本の小さな金剛杖がくくりつけられていました。

「母が生前、『いつか四国のお遍路を歩きたい』と言っていたんです。その夢を叶えられないまま亡くなってしまって……。だから、この旅は母と2人の旅なんです。 辛い登り坂のときも、リュックの後ろからお母さんが背中を押してくれているような気がして、不思議と足が前に進みました」

長尾寺で最後の読経を終えた彼女は、「ここまで来られたよ」と遺影に優しく語りかけていました。 大窪寺の寶杖堂に、お母様の分の金剛杖をそっと奉納し、結願を報告した彼女の目には、悲しみではなく、やりきった強さと感謝の光が満ち溢れていました。

門前で交わされる「おめでとう」の温かさ

長尾寺から大窪寺への最終区間は、お遍路さん同士の絆が最も深まる場所でもあります。

道中で何度もすれ違い、時には励まし合ってきた「歩き仲間」たちが、この長尾寺門前で再会するシーンをよく目にします。

「あぁ! あなたも無事にここまで来られたんですね!」 「あと1ヶ寺、一緒に頑張りましょう!」

そう言って握手を交わし、最後のお遍路道を共に歩き出す後ろ姿には、国籍も年齢も性別も超えた、本物の絆が見えます。

🏡 宿主から皆様へ

1200キロという気の遠くなるような道のりを歩き抜くことは、決して簡単なことではありません。 肉体の限界を迎え、何度も「もうやめようか」と葛藤した日々があったはずです。

だからこそ、結願を迎えたお遍路さんの笑顔には、何物にも代えがたい「神聖な美しさ」があります。

当宿は、そんなお遍路さんたちの数々の人生ドラマを間近で見守り、支え続けられることを、心から誇りに思っています。

  • 結願を前に、張り詰めた心を少し緩められる温かいお部屋
  • 旅の思い出を振り返りながら召し上がっていただく、滋味あふれる美味しいお料理
  • 「本当に、よく頑張りましたね」とお迎えする、家族のようなおもてなし

これから結願を目指すあなたも、すでに結願を果たしたあなたも。 あなたの人生の特別な1ページに、私たちの宿が寄り添うことができれば、これほど嬉しいことはありません。いつでも、長尾寺の門前でお帰りをお待ちしております。

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